お知らせ
日本は精神科ベッド数が突出して世界一多いという大きな問題を抱えています。諸外国では精神科医療の地域移行が進んでいますが、日本はベッド数を減らせないため、いまだに入院中心の精神医療から抜け出せずにいます。
従来の精神科の診療報酬は入院中心であり、地域資源への予算配分が不十分であるため、地域資源の充実が進まず、患者さんが退院することは難しい状況にあります。
また、精神科病院は、一般的な診療科に比べて人員配置が少なくても良いという「精神科特例」が、1950年代に定められて以来、いまだに続いています。そのため、スタッフ数が非常に少なく、患者さんへの十分な対応ができないために、長期入院になってしまうという状況もあります。
このように日本の精神科医療は、地域資源の不足と少ない人員配置による不十分な患者対応により、地域移行が進まず長期入院が続くことで、最大の問題である世界一多いベッド数が減らない、という構造的問題を抱えているのです。
障がい・疾患があっても
暮らせる地域作り
地域資源が圧倒的に不足しているため、約15人体制の「地域精神ケアセンター」を設立して、地域資源を充実させます。
地域での早期介入・
予防的介入
「地域精神ケアセンター」で早期介入/予防的介入※を徹底して、入院を防ぎます。※患者にとって、生きづらさのない地域・環境作りを行い、病状再発や悪化の予防につなげる取り組み
より良い入院医療へ
チーム医療の徹底
既存の精神医療の枠組みにとらわれず、患者さんが良くなるための取り組み、地域に戻るための取り組みを実施します。
それを実現できる
人員配置と人材育成
可能な範囲で人員を増やして、スタッフ全員のレベルアップのための取り組みを進めます。
東京都足立区の精神科病院「大内病院」は、老朽化により、全病棟の新築工事を段階的に実施中です。新築後の病床数を344床から228床に削減するとともに、今後はさらに、患者さんが対症療法ではなく本質的により良くなるための取り組み、また地域に戻るための取り組みを中心に行っていきます。不要な長期入院を減らし、地域移行を促進する新しいスタイルの精神科病院へと生まれ変わります。
しかし、たとえ入院医療の改革が成功したとしても、精神疾患を抱える人が安心して生活するためには、充実した地域資源がなければ良好な地域移行は成功しません。入院医療改革と地域資源の充実は精神医療改革の両輪であり、同時に進めていかねばなりません。
現在の日本において地域資源は著しく不足しており、これを充足させるためには大きな労力と資金が必要となり、実現は容易ではありません。この取り組みは大内病院単体ではなく、その運営を担う平成医療福祉グループ全体で支えながら実現を目指す、ビッグプロジェクトです。
当事者や家族が安心して生活できる地域を作るため、多機能事業所「地域精神ケアセンター」を大内病院近隣に開設します。当センターは病院や関係機関と協働しながら、地域に根ざしたさまざまな取り組みを臨機応変に進めていく予定です。
当センターは、「障がい・疾患があっても安心して暮らせる地域作り」「地域での早期介入・予防的介入」(上図を参照)の機能を担い、当事者が地域で自分らしく生き生きと暮らしていくための取り組みを行っていきます。
「地域精神ケアセンター」では、精神疾患・障がいのある人たちのための「地域に根ざした精神ケア」を行うスタッフを募集しています。
スタッフには、地域に不足しているサービスを新たに作り出したり、すでに存在する地域のサービスと当センターのサービスをつなげたり、これまでになかった地域での支援などを育んでいってもらいます。
日本の精神医療に対して課題を感じている方や、改善を自ら試みたいと思う方、また障がいの有無にかかわらず、誰もが生き生きと暮らす地域社会作りに積極的に関わりたい、という方などのご応募をお待ちしています。
当センターでの具体的な取り組み例は次の通りです。
スタッフはこのなかから、得意な分野に特化した取り組みを深めていってもよいですし、横断的に関わっていただいてもかまいません。
仕事のスタイルはそれぞれの経験や希望に基づいて、決定します。
また、ここに示した内容以外の取り組みを新たに生み出していくこともあるでしょう。
当事者の方と日々向き合うなかで、その都度「本当に必要なケア」を仲間とともに考え、話し合いながら調整し、展開することが求められます。
※ここでは、支援対象者・当事者を「メンバー」と称します。
メンバーが地域での「住まい」を確保できるように調整
メンバーの入居に関する諸手続き業務(退院前から病院と連携)
グループホーム・シェアハウスの新規開設、既存施設の運営&業務
法人でのアパ―ト・マンション購入とメンバーへの賃貸に関わる諸業務
特別養護老人ホームとの連携業務
外部入所施設との連携業務
孤立することがないように安心して過ごせる「地域の居場所」を創出
センター内に大内病院周辺に居住するメンバーがいつでも立ち寄れる「みんなの居場所」を設置
メンバーが必要な時に利用できる「ショートステイ」をセンター内で実施
制度に準じた「デイケア」をデイケアスタッフと共に実施
心身ともに健康的に過ごすための「食事」と、その場所を提供
センター内に、メンバーがいつでも健康的で安く食べられる食事を提供する「みんなの食堂」の設置、運営
外出が難しいメンバーに食事を届ける配食事業の実施
グループホームでの食事の提供、栄養サポート
メンバー同士やその家族、地域の人たちとの「仲間づくり」
ピアスタッフの育成・雇用、ピアサポーターの育成・運用に関する業務
一般とメンバーの家族によるボランティアを募り、コーディネートしていく業務
メンバーの家族同士をつなげる「家族会」運営のサポート
メンバーやその家族を中心とした各種イベントの企画・運営
より充実した「地域精神医療」を支える
精神科訪問診療、ACT※、訪問看護の運営をサポート
隣接エリアへの新規事業所の立ち上げに関わる業務(身体疾患合併患者や高齢などによるADL低下患者に対応するために、身体の訪問診療事業所も別途立ち上げ)
メンバーのさまざまな相談を「相談・連絡窓口」となり、引き受ける
「特定相談支援事業所」を開設し、あらゆる困りごとの相談窓口として機能
メンバー個々の行政手続きサポ―ト
保健所など地域の相談窓口との連携
メンバーの契約関連のサポート・トラブル相談
2023年
東京都足立区で
スタート!